サッカーを好きになった頃、秋田選手は私にとって敵だった。
あのころ、私はまだ、中山隊長と共にＪ王者を目指していた。
今となっては懐かしいけれど、当時は磐田と鹿島の二強時代だった。
そして、いつも中山隊長の一番のライバルとされていたのが、秋田さんだった。
磐田と鹿島。赤と青。ＦＷとＤＦ。ベテラン同士。こんなにライバルであることが似合う２人なんて、そうそういないだろう。
チャンピオンシップの時期には、こぞってこの２人が取り上げられてた。
初めはただの敵だった。
でも、対戦を通して秋田さんを知るうちに、その認識は「欠かすことのできない、よきライバル」に変わった。
彼は非常に尊敬できるライバルだった。
2002年の日韓Ｗ杯の時、中山隊長と違って試合に出られなかった秋田さんは、他の出場できずに悔しさをぶちまけた選手と違って、「選ばれただけで十分だから」と明るく語っていた。
その秋田さんが鹿島を戦力外になったときには、ショックを受けた。
あの一番のライバルだった秋田さんが、鹿島からいなくなってしまうなんて。
鹿島のゴール前に立ちはだかる男はもういない。そう思うと、とてもやるせなかった。
秋田さんは戦う場を名古屋に移した。そして、いつしか私も、戦う場を京都に移していた。
去年の最終戦。もう降格は決まっていた。相手は名古屋だった。
戦力外通告をされた秋田さんは、最後に10分ほど出場し、名古屋での最後の勇姿を見せていた。
しみじみしていたら、サンガのサポーターの誰かが「秋田はもらった」というゲーフラを掲げた。あれには笑った。
完全にネタだと思っていて、まさかそれが現実になるなんて思っていなかったから。
秋田さんはサンガにやってきた。「戦う」とはどういうことかをサンガに叩き込むために。
秋田さんに声援を送る日がくるなんて思ってもいなかった。人生わからないものだなぁ。
「さぶっ」のヘディングキャラが好きだった私は、ひそかに村山さんが「サンガ秋田」を描いてくれないものか、と思っていたが、今のところ描いてはくれていない。
サンガタウンで積極的にサポーターと言葉を交わす姿を見て、やっぱり彼は違う、と思った。
ファン感でのロンゲ金髪姿を私は一生忘れないだろう。
そんな秋田さんが引退する。
まさか中山隊長より早く引退してしまうなんて。衝撃を受けた。
同時に、現役の最後に京都を選んでくれた秋田さんに対して、本当に感謝の念が沸き起こった。
今年の全試合数の半分以上に出場できなかったら引退する、と決めていたらしい。
もっと秋田さんを使っていれば…と思ってしまうけど、プロの世界にそんな甘いことは通用しない。
秋田さんが出場したら、その分出れなくなる選手もいるんだから。
また一人、Ｊリーグの歴史を築いてきた選手がいなくなってしまう。
秋田さん、一年間本当にありがとう。あなたがサンガに来てくれてよかった。
きっと鹿島に帰ってしまうと思うけど、気が向いたらまた指導者としてサンガに来てください。
秋田豊選手 現役引退のお知らせ
そして中村選手、サンガに来てくれてありがとう。
中村太亮 選手(金光大阪高校)加入内定のお知らせ
「だいすけ」じゃないのがちょっと惜しいけど（笑）
