INSTINCT MACHINEGUN

ポケモン好きのサンガサポ。夫はセレッソサポのパンダ氏。ゆるすぎる観戦記やら旅行記やら。

人生が変わる予感

京都劇場に、劇団四季の「ジーザス・クライスト=スーパースター ジャポネスクバージョン」を見に行きました。
姫苺は実は高校の頃、半年くらい演劇部の助っ人をやっていて、高校の演劇大会とかも見に行ったんですが
プロの劇団を見に行くのは初めてだったし、もちろん劇団四季も初めてだったので、本当にドキドキしました。


このミュージカルは、キリストの最後の7日間を描いたものなのですが、
姫苺の母上が、今の姫苺と同じくらいの歳の時に見に行って、すごく感動したらしいのです。
その時は、鹿賀丈史さんや、市村正親さんが出てたらしい。
それで母上と一緒に見に行きました。
京都劇場は想像していたよりもかなり小さな劇場で、「こんな小さなところでやるのか!」とちょっとびっくり。


劇はもう、本当にすごかった。すごいとしか言いようがない。
やっぱりプロは違う。全てにおいてうますぎる。役名のない役者さんにいたるまで全員が、歌も踊りもすごくうまい。
テレビに出てる最近の歌手が本当にちっぽけに感じるくらいだ。
というか、「生の舞台」の力はやっぱりすごい。「生の人間の迫力」がズシンと伝わってくる。


一番「生の力」を感じたのが、役名のない群集たちで
なんかもう、人間って集まるとあれだけの影響力や空気、パワーを生み出すことができるのか。
群集の方々の圧倒的な威力に飲み込まれそうだった。
演出もすごかった。すごくあっさりしたセットだったのに、演出の仕方で場面ごとにあんなに変わるんだな。
とにかくミュージカル初体験の自分には、「すごい」という語彙しか出てこない。


そういや市場の場面の後に、舞台上に忘れ物(あってはならない遺留物)が残ってたんだけど、
これも群集の人が本当にさりげなく拾っていって、やっぱりプロだと感じた。
というのも、高校の大会の時に、舞台上に「はし(ご飯食べるアレ)」を落として、それを最後まで拾わなくて、寸評で注意されてた高校があったのを思い出した
自分たちにはあれだけ難しかったことも、あんなに当たり前にやってしまうんだなぁ。


「ジャポネスク」なだけあって、日本らしい演出が随所にちりばめられてたんだけど、
一番強烈だったのが「ヘロデ王」というキャラクター。
本当に出演時間は短いんだけど、その短い出演時間の中で、すべてをさらって行ってしまうほど強烈。
だって殿様みたいな派手な格好して、人力車に乗ってご登場し、歌舞伎風に歌い踊るんですよ?
これはw という感じじゃないですか!
劇中でこの時だけ拍手起きたし。


おそらく普通だったら姫苺は、このヘロデ王を一番気に入ったと思うんだけど、そうではなかった。
自分にとって、もっと強烈なキャラクターと役者さんが現れたから。


そのキャラクターは、ユダ。


最初はそうでもなかったんだけど(というか最初はまだどれが誰かよくわからんかったし)
途中の裏切りの場面辺りから、突然強烈にユダとこの役者さんが好きになって、もう最後は食い入るように見ていた、聞いていた。
もちろん姫苺は、役者さんの名前は全く知らなかったんだけど、後で調べたら「金森勝」さんという方らしい。


この人、というかユダの魅力を一言で言うのは難しいんだけど、
まず役者さんの方から言うと、この方の声がすごく気に入った。
なんだかすごくアクの強い、いかにもロックな声と歌い方するんだよ。とにかくすごくかっこいい。
なんつーの、ちょっとダミ声というか、グルルッという感じで歌うんだよね。それがすごく姫苺の好みだった。
なんかもう、惚れた。その声に惚れた。
劇団四季に詳しい人たちの評価は知らないけど、たぶんこの歌い方は賛否両論というか、好き嫌いが別れるとは思う。
演技も本当によくて、このユダはかなり人間味にあふれたユダだったんだけど
このユダを演じるのはすごくパワーがいると思うのよ。悩み、裏切り、そして自殺するわけだから(姫苺はパンフ読むまで、あのシーンでユダが死んだと気づかなかったけど…)
でもそれを全力で演じてらして、本当に圧倒された。
最後の方は「ユダ様」と呼びたくなったくらいだ。
あともう一ついいと思ったのが、カーテンコールの時。なんかすごくションボリというか、申し訳なさそうに出てきたんだよね。
姫苺はあれはまだユダに入り込んでるんだと思った。
疲れてただけかもしれんけど、他の方のブログ見たら前日もそうだったらしいし、わざとでない限り、役者があんな疲れ顔を見せる理由がないし。
もしあんな、劇が終わった直後に、ユダがヘラヘラして出てきたらちょっと引くじゃん。でもそれがなくて、まだユダはユダで、でも完全にはユダじゃなくて、そこが本当によかった。


その金森さん以前に、姫苺はユダという存在そのものにも強烈に魅かれた。
あ、これキリスト教徒の方が読んでたら、姫苺は殺されるかもしれないので、先に行っときますけど、裏切りという行為を肯定しているわけじゃないんですよ。
でも姫苺はユダという存在はすごく異質で、普通では考えられないような状態に置かれてると思う。
だってこんなに嫌われている人物って他にいますか?
裏切りという行為もそうで、ユダの裏切りには前提として、ジーザスの弟子という何かに「所属していた」という事実がある。
その「所属しているもの」から飛びだして、正反対の方向に行ってしまうというのは、ある意味ものすごいパワーなんじゃないかと思うんですよ。
しかも、破滅が待っていることは目に見えているわけで。どこからそんなパワーが出てくるのかと。
姫苺はいつも、自分は学校や社会という組織、そして大きな目に見えない何かに縛られて生きていて、息苦しくて、そこから飛び出したいという願望を心の底にもってはいるけれど、飛び出せないという状況に陥っている、自分は縛られている、と思っているので
自分にはない「逸脱する力」を持ったユダに何かを感じるのかもしれない。
そもそも姫苺って、昔から悪役好きなんですよね。
「みんなから忌み嫌われる存在だけど、存在しないと物語が成り立たない」という。そういう存在にすごく特異性を感じるし、興味を持ってしまう。
これはユダにも当てはまることだ。


なんか長くなってしまったけど、とにかく本当にこの金森さんのユダがよかった。一気にこの方のファンになってしまった。
同時に舞台・劇の魅力も知ってしまった。
もちろんユダ以外にも感動したんですよ。ジーザスとか、いい意味で神っぽくないというか、人間っぽい、でもどこか違う感じがすごくうまく表現されてて。歌もすごくうまかったし。
姫苺は「エルサレムバージョン」も見に行く予定なのですが、今から楽しみで仕方がない。
でも、なんとユダ役はトリプルキャストらしく、次に行く時にユダは金森さんじゃないかも…(泣)
ユダには他に一番手の方がいるらしく、CMとかで流れてるのもその人の声らしいので、
その方を見たい気もするのですが、やはりまた金森さんのユダも見たい。
うわああ誰になるんだろう。今からハラハラドキドキだ。


何かをこんなに好きになったのは本当に久しぶりだ。
本当にこの舞台を見たことで、人生が変わってしまうかもしれない。
お母さん、連れてってくれて本当にありがとう。