INSTINCT MACHINEGUN

ポケモン好きのサンガサポ。夫はセレッソサポのパンダ氏。ゆるすぎる観戦記やら旅行記やら。

盛岡のキヅールと鳥栖の値段のないチケットの話

だいぶブログを放置してしまった。
出産前にできるだけ西京極に行ってブログを書こう、と思ってたのですが、前回のブログに書いた山雅戦の後に切迫早産で自宅安静になってしまい(汗)西京極どころか仕事へも行けない事態に…。
試合はずっとダゾーンで見てます……。


出産後はさらにブログを放置することになると思うので、今のうちに何か書いておこうと思った。
ということでサンガの話ではないのですが、最近思うことなどをつらつらと。


この前、グルージャ盛岡クラウドファンディングに参加しました。
そうです、キヅールを立体化して着ぐるみを作るというあの企画です。

挑戦! グルージャ盛岡 公式クラブマスコット「キヅール」立体化プロジェクト


私はリターンとしてぬいぐるみを選択しました。
「20cmサイズ」と書いてあるのを信じて選択したけど、グルージャ公式ツイッターに「縦幅20cm・横幅40cm」と書いてあって震えている……!!


このクラウドファンディングはキヅール人気もあって、当初の目標額もすでに超えて好評みたいですね。
この企画を見ていて、ひとつ思い出した企画がありました。


けっこう前のことになるけど、鳥栖の「金額のないチケット」という企画。

ホームでは絶対に負けられない! 5/27(土)vs北海道コンサドーレ札幌 第1弾 一夜限りの『値段のないスタジアム』チケット販売のお知らせ

購入の際にチケット代はいただきません。
試合内容、サガン鳥栖選手の姿にご満足いただいた方は、
お帰りの際にあなたの満足したお値段を入場口の
【ボックス】にてお支払いください。

このチケットの値段を決めるのは『あなた』です。


で、その実施結果がこちら。

「値段のないスタジアム」1人平均812円支払い 集客に効果、第2弾準備も サガン鳥栖

サッカー・J1サガン鳥栖が、本拠地ベストアメニティスタジアム鳥栖市)で5月27日に行った集客イベント「値段のないスタジアム」の結果を公表した。試合の満足度に応じて観戦料を後払いしてもらう企画で、1人当たりの平均支払額は812円だった。

イベントはJ1クラブでは初の試み。A自由席など4券種(前売り2千円〜3700円)の席が対象で、5620人が利用し、出口に設置された料金箱には456万8215円が集まった。

この日はコンサドーレ札幌戦で、年間パスポートの利用者らを含めて1万4416人が来場。ドイツ1部・Eフランクフルトへの移籍が決まったMF鎌田大地選手がゴールを決め、鳥栖が1:0で勝利した。


これはある種の実験だったと思うので、失敗、と言うのはちょっと違うと思うけど、勝利した試合で平均支払額812円というのはなかなか衝撃的な結果だと思う。
でもこの結果から、本当に鳥栖のこの試合は812円の価値しかなかったと判断するのは早計で、私はそもそもこの企画には大きな欠点がいくつかあるんじゃないかなと思ってた。箇条書きにしてみると、


(1)「試合内容」のみを支払額の判断根拠にしている


そもそもJリーグのチケット代って、純粋に「90分間の試合」の対価として値段設定されているわけではない。
キックオフ前からスタジアムで行われてる(スタグル含めた)イベントの運営費、スタッフの雇用費、スタジアムそのものの使用料etc……。
これらをすべて含めた料金が「チケット代」(通常の前売り価格である2千円〜3700円)であるはず。


ところが、今回お客さんに支払ってもらう前提条件として「試合内容、サガン鳥栖選手の姿」への満足度のみを設定してしまったから、話がおかしくなってるような気がするし、通常の前売り価格と単純に比較するのはおかしい、というか比較できないはずだよね。
この前提条件があったら、たとえ試合前のイベントが楽しかったり、対応してくれたスタッフが親切だったりしても、「試合」そのものの満足度でしかお金は支払われない。


逆に、この結果を利用して、試合単体に対する評価額が800円程度なわけだから、前売価格との差額を埋めるために、その他の部分(スタグルとかイベントとかスタッフ対応とか)で付加価値をどんどんつけていかなければならない、という考え方に至るのであれば、それはひとつの収穫だと思う。


(2)人間の「自分に甘い部分」が考慮されない


あと、人間ってどうしても自分に甘くなってしまう生き物だと思う。
だから、自分で金額を決めさせると、どうしても甘さというか、「このくらいの金額でいいかな」って部分が出てしまうと思う。たとえコアサポであっても。


たとえばクラブの懐事情が変わったりして、スタジアム全体のチケット代が値上げするとする。
たぶんコアサポと呼ばれる人達は「えー」と一瞬不満を感じるとは思うけど、やっぱり自分が応援してるチームが好きだから、値上げしてもスタジアムには来ると思う。
でもそれは「他者」が値段を決めて、それを受け入れるか受け入れないか、という判断になるから、結果的に、自分のチーム愛と比較して、受け入れられるんだと思う。


しかし、これが自分で金額を決めるとなれば別だと思う。
きっと、決定権がすべて自分に委ねられてしまったら、どうしても甘くなってしまって、「自分が実際に抱いているチームへの愛、試合への満足度」よりも、「金銭として支払う金額」は低くなってしまうんじゃないだろうか。
もしかしたらこの試合の対価としてに5000円とか支払った人もいるかもしれないけど、そういう人は、きっともっと高い金額を要求されても出せるような人じゃないかな。


意識の高いコアサポじゃなかったら余計にそうで、「チケット代払わなくても試合が見れる!やったね!勝っても負けてもお金払わないぞ!」って考える人も一定数いただろうし。
そういう「ハナから払う気のない人たち」が支払った(というか支払わなかった)分を除去する仕組みがこのシステムだとないよね。


(3)「すでに結果がでたもの」への対価は低くなる


通常、試合の観戦チケットって前払いだけど、今回は完全に試合結果が出た後の「後払い」になってる。
物品を買うときはまた別だと思うけれど、イベント関係で人間の購入意欲というものを考えたときに、
「結果がどうなるかわからない」というギャンブル性ってけっこう重要だと思うんだよね。


たとえば、スマホゲームのガチャとか、AKB総選挙での投票とかもそうだと思うけど、
「良い結果がでるかどうかは全くわからない」けど、「良い結果を見たい」という「期待値」からどんどん課金してしまう心理ってあると思う。
逆に、いったん結果が出てしまったもの、手に入ってしまったものに対しては、たとえその結果が良いものであっても、金銭的評価は「結果が未知数」の頃と比べて下がるんじゃないだろうか。


AKBの総選挙とかでも、推しのメンバーが何位になれるかわからない(=未知の結果に対する前払い)から、投票権のためにお金を払ってCD買おうという気になるわけで。
たとえばこの選挙が、投票そのものはタダで、結果発表後に「おひねり」として対価を支払うものであったと仮定して、
選挙後に指原さんが「わたし1位になったので、ファンの皆さんはお祝いにCDを○枚買ってください」って言ったとしても、絶対に投票前ほどは売れないと思う。
ファンにとってはもう「1位になった」って結果が先に出てて、「期待値」がなくなってしまっているから。


ここでキヅールの話に戻るんだけど、クラウドファンディングも基本この「期待値」の心理を利用したもので、
今回のような「着ぐるみを作る」に限らず、たとえば研究者の研究資金を支援するものとか、様々なジャンルがあるけど、
みんな「本当に作れるかどうかわからない」からこそ、支援したい、って気持ちになるんだと思うんだよね。
これでもうすでにキヅールの着ぐるみが完成していて、「立体化に300万円かかったので寄付をお願いします」って流れになっていたら、果たしてここまでの支援が集まっていたかどうか。


つまるところ、「前払い」である通常のチケット代と、今回の「後払い」の結果を比較してもあまり有意義なものにはならないと思う。
でもここから学ぶことがあるとすれば、結局はどれだけ「Jリーグをスタジアムで観戦する」ことへの「付加価値」と「期待値」を上げられるかが重要、ってことじゃないかなぁ。
実際に試合を観戦して、そこに感じる対価が800円程度なのだとしても。
スタジアムをもっと楽しい場所にして、試合以外の部分に800円以上の付加価値を持たせればいいし、
スタグルとかでもなんでもいいから、広報活動やら何やらで「スタジアムへ来ること」への期待値がグッと上がるようにすればいい。
要は「試合の満足度」だけにチケットの売り上げを依存してたらダメだってこと。
それこそ負けが続く弱小チームとかは、試合結果だけだとチケットを売ることができないもんね。


余談だけど、甲子園の売り子をやっている妹から聞いたところによると、阪神が勝っている試合展開のときには、ビールの売り上げが通常よりも上がるらしい。
ビールもスタグルの一種だと思うけど、チケット代にダイレクトに反映されてなくても、何か別のものの売り上げに試合結果が反映されていることもあると思う。


なんだかまとまりのない文章になってしまったー。
とにかく「812円」という事実にそこまでがっかりする必要はないんじゃないか?という話。今更の話題だけどね。